大会長挨拶

第20回日本口腔機能水学会総会・学術大会のご案内

この度、第20回日本口腔機能水学会総会・学術大会を東京医科歯科大学にて開催させていただくことになりました。思い起こせば、2012年『機能水のエビデンス』をメインテーマとした第13回学術大会が和泉雄一先生を大会長として開催され、当時私が準備委員長を務めさせていただきました。今回は、第20回という記念すべき大会の大会長を務めさせてさせていただく機会を賜り、本学会学会長 佐藤 勉先生に、この場をお借りして御礼を申し上げます。

さて、現在、機能水として、電解水、オゾン水などが開発され、さらに後者では、気体が水溶液中に単に溶解しているもの他に、マイクロバブル水(ファインバブル水)、ナノバブル水(ウルトラファインバブル水)が開発され、含有気体の種類による性質の違いだけではなく、物理学的性状によって付加される機能の解析が進んでいます。

振り返れば、1966年にボリス・デリャーギンによって報告されセンセーションが引き起された「ポリウォーター事件」が想起されます。デリャーギンの「発見」が事実であれば、高分子の材料として安価な「水」を使うことが可能となるという、大発見でした。現在は、ポリウォーターの存在は否定されましたが、当時追試に成功したと報告した科学者も存在した事実は、機能水のみならず科学に携わる者に対する大きな警鈴であると思います。

とまれ、数々の「怪しい水」「ニセ科学」が存在していた時代にそれらを淘汰し、「機能・機序を科学的に証明可能である」をキーワードに、堀田先生のリーダーシップの下、機能水研究振興財団、日本機能水学会を中心として果敢かつ細心に研究が続けられたことが見事に結実し、近年の機能水の発展に繋がりました。成熟期にある現在の状況を鑑み、本大会のメインテーマは、“機能水の「機能」に迫る -機能水のさらなる臨床応用を目指して-”としました。他のいわゆる化学合成物質とは異なり、安全性が担保された機能水には、殺菌能だけでなく多様な生理機能があることが解明されてきました。そこで、本大会が、これらの機能の臨床を含めた利用について、discussionする好機ではないかと考えました。

本大会においては、教育講演として堀田国元先生(一般財団法人 機能水研究振興財団 理事長)による「機能水研究の始まり、歩み、そして未来」~機能水バッシングをいかに乗越えてきたか、これからも乗越えるには~においては、機能水の黎明期から現在の機能水の科学的・社会的位置づけまでを俯瞰していただく予定です。特別講演1として鍵 裕之先生(東京大学大学院理学系研究科 教授)の「地球や惑星の内部に存在する水と氷」では、我々が“普段目にすることのできない水”についてとても興味深いご講演をいただき、さらに、特別講演2として高橋 正好先生(東北大学未来科学技術共同研究センター 教授)による「微小気泡の機能に及ぼす物理化学的な特徴」では、近年産業界、医療界において研究・利用されているマイクロバブル(ファインバブル)、ナノバブル(ウルトラファインバブル)の基礎的特性についてご講演いただく予定です。その他、一般口演・シンポジウム、企業展示の他、堀田先生のご講演内容とリンクした「機能水のマイルストーンを振り返る、そして未来へ・・・」と題して、図と写真で機能水の歴史を振り返り、かつ、未来のありようを考察するといった、第20回の記念となる大会にふさわしい内容となっております。

多数の皆様のご参加を心よりお待ちいたしております。

第20回日本口腔機能水学会総会・学術大会 大会長
東京医科歯科大学大学院 生涯口腔保健衛生学分野
荒川真一